Nitriding/Nitrocarburising

SN(エスナイト)処理

エスナイト処理(Sulfinuz nitrocarburising)は、ガスプロセスでの浸硫窒化処理で、鋳鉄からステンレス鋼に至る広範な鉄鋼材料の表面に硫化鉄と窒化鉄を形成させ、高温、高圧で摩擦する部品の初期ナジミ性を改善して、磨耗と焼付きに卓越した効能を発揮する表面改質処理です。

特徴

  • エスナイト処理は無公害処理技術です。塩浴での浸硫窒化処理のようにシアン公害の発生はまったくありません。
  • 処理品質は不安定な熱化学反応で硫化鉄と窒化鉄を形成させる浸硫窒化法と異なり、マスフローコントローラーで管理したガス雰囲気中で処理するため、目的とする硫化鉄と窒化鉄を自在に形成させることができます。
  • アルミダイカスト型、押し出し型の場合は、ヒートチェック、溶損、溶着、侵食、焼付の発生を防止し潤滑性と離型性を改善します。各種産業機械部品に対しては、対摩耗、耐焼付の他に疲労強度を大幅に向上させます。
  • 処理実績は量産の摺動部品やアルミダイカスト型に採用されて文字通りの効果をあげており、高く評価されています。
  • 480~550℃の温域で処理しますので、プリハードン鋼、高温焼き戻し済であれば変形等の問題なく処理が可能です。
  • 熱間ダイス鋼やステンレス鋼などの合金系材料は100mmで5~10μm前後の膨張で処理されます。
  • 窒化鉄は1mm以下の溝や孔の中にも均等に形成されます。
  • 窒化による鋭角部の刃こぼれは白色の化合物層を形成させないので起こしません。
  • 面粗度は硫化皮膜が形成されるため表面が濃灰色に変化しますが、塩浴での浸硫窒化処理のように大きく面粗度を損ないません。
  • 溶接補修はアルミダイカスト型の場合、窒化鉄の窒素濃度を低くしてあるので、溶接によるピンホールの発生は極めて少ないです。なお溶接に関しては、窒化品への溶接スキルが要求されますので、慣れた溶接業者に依頼することを推奨しております。
  • 処理可能な大きさは、φ650mm×H1500mmの円筒状のバスケットに入るもので、単重が450kg以下のものであれば処理できます。
SN(エスナイト)処理

適用部品例

プラスチック金型

〈適用材料〉
NAK55,80,HPM1,50,DH2F,FDAC,GO40F,HPM2,PDS5,PX5,HPM7,SKD11,RIGOR,SKD61,
DC53,SKH51,ASP,HAP,DEX,KHA,LAMAX,HPM38,S-STAR(PD555),ELMAX,etc

〈処理効果〉
耐摩耗、耐焼付、摩擦係数低減、離型性

プラスチック金型

アルミダイカスト、押出し、鋳造用金型

〈適用材料〉
SKD61,SKD62,SKD6,DHA,DHA1,DH21,DH31,DAC,DAC3,DAC10,DAC45,etc

〈処理効果〉
耐摩耗、耐焼付、溶損、溶着、ヒートチェック

アルミダイカスト、押出し、鋳造用金型

各種産業機械部品

〈適用材料〉
SCM435,SCM440,SACM415,SCM645,SCr435,SCr440,SCr415,FC,FCD,etc

〈処理効果〉
耐摩耗、耐焼付、潤滑、摩擦係数低減、疲労強度の向上

各種産業機械部品
各種産業機械部品

採用上の注意

  • SPCC、SS41、S45C、SKなどの構造用圧延鋼材(板)、機械構造用炭素鋼及び炭素工具鋼で、高硬度を必要とする部品はブイナイト処理を採用してください。
  • 各種ステンレス鋼及び合金工具鋼を高硬度に焼入れしてから、エスナイト処理を施す場合は、520℃以上の温度で充分時間をかけて焼戻してください。
  • 表面にクロムめっき、PVD、黒染などが施されていると窒化鉄が形成されませんから、これらの被膜は事前に取り除いておいてください。
  • アルミダイカスト型については特殊な条件で処理しますので、注文書にダイカスト型であることを明記してください。
  • エスナイト処理は、鋼種や使用目的で処理条件を変えて処理しますので、御引受けした製品の御返却が2~3日遅れることがあります。